2002年夏

扇風機の風が汗ばんだ肌に当たる。
冷酷な言葉を受け取ってから
暑い夏も零下のように感じ、
さびれた液晶画面は、誰からの着信でさえも
受け取る気配はなかった。

傷は大きい。

梅雨が終わり、ようやく照りつける太陽と共に
夏が到来した時に、私は人生の照明を落とされてしまった。

暗中模索の中、やっと抜き出してきた
不器用な言葉のかけらをつなぎあわせ、
作り上げた文。でも、一言の重みに
勝てる文章はなかった。

それらを打ち砕く能力さえ、
むしろ、私が拒んだと告げるように。


2002夏 2


夜道を走る2人乗り。
カラカラと車輪の音を、
雨上がりの人のいない路上に上乗せして。
涼しい湿った風に。

こわごわと掴む貴男のシャツ。
ふざけて危ない運転をして
私をこわがらせる度に
低い深い声で笑う。

落ち着く音。
広い背中。

先の見えなかった暗い道の先に、
突き当たりの道の光が照らしていて、
2人でそこに混ざった。


2002年11月

白い雪の上で私は眠る。
暗い光を失った世界で。
ぼんやりと映される白さの中で。

それが私には暖かい。
それが私には居場所である。

時をゆるくさせたこの空間で
安らかな眠りと吐息を。




誰かの孤独な泣き声に
耳をかたむけようとしない者は?

私は耳が遠い
私は耳が聞こえない
私には聞こえなかった


何とでも言え。




ゆらりと駆けゆく旋律よ
大きな平原と広い空を
     私に提示してくれるか

その中に飛んでゆく

地平線に辿りつくまで

冷たい風と共になって
流れるしなやかな音と同時に

時には日は差し
時に舞う
時に降下
時にかげる

気がつけば寒い教室

 

 

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